人間オークション       ~100億の絆~
―且功side―
「僕の命令を無視したのか?」
「……無視も何もご命令通りですよ。仕事を教えていただけだよ。」

廊下から命(みこと)の声が聞こえたから様子を見るために扉を開けると咲月が命(みこと)を押し倒していた。その光景を目にしたとき僕の中の何かがこみ上げてきた。

「お前、命(みこと)のことが嫌いだっただろ。なんであんな……」
「好きになった。」


こいつは何を言っているんだ。あんなに毛嫌いをしていて追い出そうとまでしていたのに命(みこと)のことを好き…だと……?


「って言ったらどうする…?俺を殴る?」
「何をふざけたことを言ってる。」

「本気だよ。あの子意外と根性があるし面白い。」
「あれは僕の玩具だぞ。」

「だから?」


咲月の言葉に冷や汗が流れた。自分でもなんでこんなに気が昂っているのか分からない。なのに咲月には全て見抜かれているような気がした。


「まあ、あの子まだ14だし手は出せないけど将来は分からないだろ。」


あの咲月が……人に興味を持たない咲月がこんなことを言いだすなんて思ってもみなかった。

「僕の玩具に手を出したら許さない。」
「……御当主様の許可も取らずに100億で買ったのに……?100億なんて金どうやって引き出したのかと思ったら自分の所持金だったなんて驚いたよ。これでも執事長なんで帳簿はつけてるからね。」


命(みこと)を買うために使った100億は僕が知らないうちに貯まっていた自分の金だった。だから許可なんてとらなくてもいいしどうせあの2人のことだから家に帰ってくることもないからバレることもないと高を括っていた。

「何が望みだ。何を企んでる。」

「……お前が麗亜と婚約をすることだ。そうすれば俺は命(みこと)と一緒にこの家を出て外で暮らす。」
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