人間オークション       ~100億の絆~
―且功side—
咲月から、命(みこと)が麗亜の案内をしたと聞いて嫌な予感がすると案の定喧嘩をしていた。麗亜の我が儘に腹が立つのは分かるが命(みこと)も臆さず自分の意見を言っていた。

「ククク……。」
「且功さん、どうなさったの…?」

「いや、何でもないですよ。少し思い出し笑いをしていただけなので……。」

「それはさっきのちんちくりんですか…?」
「そうですよ……とても面白い生き物です。」

「あんなちんちくりんのことなんかどうでもいいの。且功さん、何で私との婚約を破棄したの…?うちとの取引まで切るなんて……。」

「逆にお聞きしますが、好きでもない人と家や跡継ぎのために結婚できる人がいると思いますか…?」
「私は且功さんが好きなのよ!何なのその意味が分からない質問は。」

「では直接的に言わせていただきます。僕は貴女のことなど好きになったことはありません。如月家のための婚約、如月家が衰退しないために用意されたもの。もう貴女とは関わることがないと思うので全て白状しますが、貴女のその我が儘には反吐が出る。誰の言うことも聞く耳を持たずやりたい放題。それなのにこちらが作り笑顔で接していてもそれすら感じないおめでたい人間。そんな伴侶は願い下げだ。僕はこういう人間だ。こういうことを平気で言える人間。御父上には僕が失礼な態度をとったとでも言えばいい。それで婚約の話は白紙だ。」

「私は且功さんがどんな人でも受け入れるわ。私は初めて会ったときから貴方のことがずっと好きだったの。家のことなんか関係ない。私は貴方と一緒にいたいのよ!」

「もし貴女が本当に僕といたいと思うなら神無月の家を捨ててください。僕は如月や神無月といったブランドにはほとほと興味がない。利用することはできても結局家のブランドに守られるなんて生き方は要らない。」

「神無月を……棄てる……。」

「帰るなら今のうちだ。本当にこの屋敷に住むのであれば自分のことは自分でやり家事も行え。何もしない用無しなど必要ない。」


僕自身もなぜこんなことを言うのか分からない。命に感化されたのか…?


「……分かったわよ。あのちんちくりんともルームシェア?っていうのをするわ。それならここにいていいんでしょう?」


そう言い残すと麗亜は部屋を出て行った。なぜ彼女は僕のことを好きなんだ。僕は所詮偽りの後継者だったのに。


いや、今はこんなことを考えている場合ではない。やることは山積みだ。
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