人間オークション       ~100億の絆~
「ちんちくりん、私は貴女とルームシェアをしてさしあげるわ。何か文句はある?」


部屋に戻ってくるなり麗亜さんがそう言った。且功さん、何を言ったんだろう……?


「そんなにここを離れたくないのですか……?且功のこと、そんなに好き……?」
「うるさいわね!私は且功さんと結婚をして一緒に暮らすのが小さいころからの夢なの。お父様が如月家との取引をやめようが私は諦めないわ。」

「麗亜さんは……すごいです。」
「何よ、ちんちくりんの分際で私を卑下するつもり?」

「ううん。卑下って何か分からないけどすごいなって思ったです。誰かを好きになることができて、夢のために諦めずにいられることはとても強いです。私は…誰かを好きになるっていうのは分からないけど、麗亜さんがそこまで且功のことを好きだってことが分かってびっくりしました。」

「まあ、貴女は所詮子供ですものね。」

「大人になったら私にも好きな人できるですか?」
「知らないわよ、そんなこと。」

「とりあえずご飯にしましょう。今日は咲月さんが教えてくれたサンドウィッチです。作るのも簡単で美味しいのです。」


サンドウィッチがのったお皿を麗亜さんに渡すと不思議そうな顔をしていたけど口をつけてくれた。


「どうですか!?私の自信作なのです。」
「まずい。」
「へ……?」

「具は大きいし食べにくい。マヨネーズがべちゃべちゃしていて口当たりも悪い。こんなもの食べさせられるなんてたまったものじゃないわ。」
「だったらいいです、私が食べるです。」

「いいわよ。残したら且功さんに言いつけるんでしょ?我慢して食べてあげるわよ。」
「そんな狡いことしませんよ。」

「このサンドウィッチ、本当にまずくて気分は最悪よ。でも、作ってもらったものを残すのは最低な行為よ。たとえ貴女が作ったものだとしても食べ物に罪はないもの。」



「麗亜さん。本当は貴女はとても優しい人なのですか?」
「は…?」

「食べ物のためなんて言ってるけど残さないでいてくれるのは私のためなんじゃないかって思って。」

「おめでたい頭ね。私にとっては貴女なんて大したことない存在よ。」
「ありがとうなのです!」

「は…?」
「おめでたいだなんて初めて褒められました。」
「今のは褒めたんじゃなくて皮肉よ。そんなことで喜べるなんて幸せな頭ねって馬鹿にしただけよ。」

「でも麗亜さんは口に出してくれたです。前は私のこともっと嫌がって口もききたくないって顔してたです。」

「且功さんとの未来のためよ。且功さんにとって私はどうでもいい存在みたいだから……貴女を上手く利用すれば好かれると思っているだけよ。好かれたくてやってるだけよ。」


初めて会った時と比べると麗亜さんは私の顔を見て私と話している。麗亜さんにとって且功の存在がどれくらい大きいのか私にでも分かる。


「このあとは洗濯ものを干して洗い物をするです。麗亜さんも来るですか?」
「な、んで私が……。」

「今の麗亜さんならここに暮らしても良いのです。最初はとても嫌いでしたが麗亜さんと話をしていたら応援したくなりましたです。且功との未来を。」

「貴女と話していると疲れるわ。頭がおかしくなりそう。」
「それならこの部屋で休んでいてください。」

「いいわよ。見に行くわ。本当にこの家に住むかなんて分からないけれど、且功さんといるためには働かなくちゃいけないのでしょう…?」
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