人間オークション       ~100億の絆~
麗亜さんがここに住むようになってもう1つ発覚したことがある。彼女は……


「なんで唐揚げに砂糖が入ってるんだ……。」


料理がド下手のようだ。それも且功が呆れるくらい。咲月さんもお手上げだと言っていて私が唯一麗亜さんに勝ててることだと言っていた。


「だってたしかレシピには砂糖って…あら、塩だったかしら?とにかく白い粉を入れるのよ。」

「その言い方はいろいろと誤解を招きそうだぞ。」



「料理なんてできなくても生きてこられたもの。頼まなくても皆が準備をしてくれて私はそれをただ食べるだけ。だからこんなに大変だってことも知らなかったの。」

「で、そのお世話をしてくれるような神無月家の家を出て本当によかったのか?」
「わからないわ。まさかお母様が人間オークションに関わってるだなんて思わなかったもの。私は且功さんに話を聞く前から人間オークションの存在を知っていた。なんて汚らわしくて低俗なことだと。決して関わりたくないものだと。でも、まさかこんな身近に関わりの深い人がいたなんて……。」


「まあ、これで麗亜もこちら側になったわけだし僕の目的を伝えてもいいだろう。麗亜、僕は人間オークションを作り上げた奴を徹底的に潰すつもりだ。もちろん主催者を含めパトロン全てだ。もちろんお前の家も本気で潰す気でいる。構わないな?」

「……私は且功さんを信じています。昔からずっと。もう、あそこは私の家ではありません。だから且功さんの好きなようにしてください。」


私以外で続いていく悲しい話。

人間オークションを作った人たちを潰すという且功。且功は遠慮なんて絶対にしない。潰すということは麗亜さんの家族を……全てを本気で壊すということ。

麗亜さんのことは好きじゃなかった。今でもよく分からないこともある。だけど、且功が人間オークションを潰してすべてが終わったら麗亜さんはどうなるの…?

愛してくれる家族がいなくなって私みたいに1人になるの……?1人で悲しみも寂しさも感じなくなるようになってしまうの……?


「命(みこと)、心配するな。麗亜がこちら側に着くなら僕は麗亜を傷つける気はない。守るなんて言いきれるわけではないが敵以外を巻き込むつもりはない。」

「それに、且功が神無月家を潰せば如月家は強くなる。これ以上簡単な戦略は無いよ。」



だけど、それでも悲しくなるよ。麗亜さんの大切なものを壊すだなんて。


「命(みこと)、私は今までたくさん我が儘を貫いてきたわ。だから、これも私の我が儘だと思って聞いて。命(みこと)がもし私のことを可哀そうだと思っているならそれは間違いよ。正しくまっとうな生き方のために正義を行うと思いなさい。どんな人間でもやっていいことと悪いことの分別はしなくてはいけない。私は人間オークションなんて失くすべきだと思ってるわ。私は誇り高き神無月麗亜よ。いつでも気高くそして上品に悪に裁きを下すだけ。」


麗亜さんにそう言われてしまったら私にはもう何も言えない。本当は一番怖いはずの麗亜さんを否定することになってしまうから。


「命(いのち)ある限り……初めて貴女に会った時私は貴女が嫌いだったわ。でも、貴女はどんな時もめげず、ありのままの自分で生きている。だから私は貴女という存在を認めたくなったの。だからそれを貫いてちょうだい。」
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