人間オークション       ~100億の絆~
家で且功と過ごしていると且功のスマホが鳴った。きっと咲月さんがかけてきたんだと思う。麗亜さんとの買い物は大変だ、とかで。


「おい、それはどういうことだ?」

「且功…?」
「今すぐ帰ってこい!」


ジリリリリリリン


且功の怒鳴り声と共に家の電話が鳴った。咲月さんとの電話で出られない且功の代わりに受話器を取ると聞き覚えのある声が聞こえた。


「こんにちは、命(みこと)ちゃん。如月さん、いらっしゃる?」

「なんの用ですか…?麗華さん。」
「如月さんに伝言をお願いしてもいいかしら?」

「伝言…ですか?」

「伝えたいことは2つよ。1つ目は、麗亜は今、神無月家の屋敷にいるということ。そしてもう1つはね、また人間オークションを開始するということ。これだけ伝えてくれればきっと如月さんは意味が分かってくれるわ。聡い人だから。」



そんなこと…且功じゃなくても誰にだって分かる。馬鹿な私にでも。


「麗亜さんを……人間オークションに出す気ですか…?」

「あらあ、命(みこと)ちゃん。貴女も賢いのね。じゃあ場所と時間も」
「どういうことですか?麗華さん!」


麗華さんが途中まで話をしたとき私の手から受話器が取り上げられた。もちろん取り上げたのは且功。



急いでスピーカーボタンを押すと麗華さんの声が部屋中に響いた。


「且功さん、あなたには選んでもらいたいのよ、選択肢を。麗亜を返してほしいなら命(みこと)ちゃんを私にちょうだい。もし命(みこと)ちゃんをくれないのなら麗亜を人間オークションで競りにかける。」

「気は確かですか?彼女は貴女の娘でしょう?」
「そうよ。でもね、私考えたの。娘は1人だけでいいって。だからね、麗亜を手放すことにしたの。愛したあの人との子である命(みこと)ちゃんを受け入れるために。命(みこと)ちゃんを渡すなら麗亜には何もしないわ。でも、もし拒むなら麗亜は如月さんのせいで傷者になる。」

「つまり、どちらかを選べということですか。生憎、僕はそのような脅しには屈しませんよ。」
「そうよね……だからこうやって連絡したのに。今夜21時、麗亜のオークションを開催するわ。場所は命(みこと)ちゃんの時と同じ場所。それまでにどちらを選ぶか考えておいてくださいね。」


その言葉と共に連絡は切れた。私が麗華さんの元へ行かなかったら麗亜さんが酷い目に遭う。


「且功、行こう。」
「命(みこと)、何を言う?」

「麗亜さんを助けなきゃでしょ!?」
「それはそうだが僕はお前を売るようなことは……」

「私はどこにも行かないよ。命(いのち)ある限り且功の傍にいる。だから麗亜さんを助けに行ってまたこの家に帰ってこようよ。且功と咲月さん、麗亜さんと私で過ごせるように。」
「何があるか分からないんだぞ。」

「それでも私は行く。命(いのち)ある限り、やることはやらないと。私は麗亜さんを助けたい。」


「わかった……咲月が帰ってきたらすぐに出る。それまでに服も着替えておけ。」


このことだったんだ。麗華さんが言っていたタダでは済まないこと。それにしてもひどすぎる。自分の娘を…家族を…あんなオークションに出すなんて。



絶対に、許さない……!
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