人間オークション       ~100億の絆~
「麗華…お前が…?」


客席から現れる麗華さんの姿にさらに会場は騒ぎ始める。まるでこのやりとりでさえ全て仕組まれたことのように麗華さんにスポットライトが当てられる。

「麗華、本当にお前がやったのか…?」
「だからそう言っているでしょう。」
「大事な私たちの娘だぞ。愛する娘になんてことを。」

「愛する……?あなたが愛しているのは家とお金でしょう?娘のことも私のことも愛していない。大切なのは神無月家だけ。」
「そんなことはない!私は私なりにお前たちを愛して……。」


「じゃあなんで私のことを見てくれないのよ!麗亜が生まれるまではあなたは私のことだけを見ていてくれた。何よりも私を愛してくれて大切にしてくれた。それなのに麗亜が生まれたら私は2番目になってしまった。それだけならまだ許せた。麗亜は大切なあなたとの間にできた大切な子供。でもあなたはそのころから仕事のことばかり。家のことを全て私に押し付けて私を愛してくれなくなった。だから私は愛人を作ったのよ。それでもあなたは家のことばかり優先していた。やっと私に愛人がいることに気づいたのは私が愛人との子供を身籠ってからだった。それが分かったとたんあなたは私からあの人をとりあげたわね。」

「当然だ。神無月の家に恥じるべき行為だと判断したからだ。」

「神無月、神無月、あなたは昔からそればかり。なによりもお金、なによりも家柄。私はあなたの愛を信じて結婚したのに……。あなたは私に何もくれないじゃない!だから私は考えた。私は私が求めるもの以外いらないわ。だから、私はあなたのことも麗亜のことも捨てることにしたの。大切なあの人とそこにいる命ちゃんと私は生きることにしたの。それなのにそこにいる如月且功がそれを邪魔した。」

「どういう意味だ…?」

「そこにいる彼女が私があの人との間に産んだ子よ。本当は前回のオークションで私が競り落とすはずだった。それなのに100億だなんて金額をつけ私から奪った。本当は命(みこと)ちゃんを養子として受け入れて神無月家の子供にすればそれで済む話だったのにあなたはそれを拒んだ。だからね、私にはもうあなたはいらないの。」


そう言う麗華さんの右手にはナイフが握られていた。

「私はね、もう決めたのよ。あなたは私にふさわしくない、いらない。だから如月さん、これが最後の警告よ?麗亜をあなたにあげるわ。だから命(みこと)ちゃんを私に返しなさい。」

「前にも言ったはずです。命は貴女には渡さないと。」
「そう。それは残念ね。じゃあ仕方ないわよね。」

パンツ

その言葉と同時になにかがすれるような音が聞こえた。それと共に理人さんが倒れる。

「お父様!」


慌てて麗亜さんと一緒に理人さんの元へと駆け寄るが胸から大量の血が出ている。


「お母様、なんでこんなひどいことを……。」
「これは如月さんのせいよ。彼が命(みこと)ちゃんを私に返さないから理人さんを殺したの。如月さん、次は麗亜を撃つわよ。早く命(みこと)ちゃんを返すと言いなさい!」


麗華さんの言葉に何も発さない且功。なにを考えているの?このままじゃ麗亜さんまで……


「そんなに殺したいなら直接僕を殺せばいい。」


そう言って両腕を広げる且功。まさか麗亜さんと私を守るために撃たれる気でいるの…?

「そう、それなら話が早いわ。さようなら、如月さん。」



そう言い麗華さんが何か合図を出した途端私の足は動いていた。何を考えた何か分からない、だけど感じたものはとてつもない痛み。



「命(みこと)!」
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