人間オークション       ~100億の絆~
―麗亜side—

「失礼します。」

且功さんと咲月と離れたあとお父様の病室へと来た。あの時、お父様は死んだと思っていた。だけど…助かった。きっとこれは神様からの私への試練なのだと思う。


「お父様、お加減は……?」
「なんとか……助かったよ。お友達は……?」

「まだ手術中のようです。」

「そうか……私が撃たれた後、彼女も撃たれたと聞いた。なんと可哀そうに……。私たちのせいで彼女には悪いことをしてしまった。私が不甲斐なく情けないばかりにこんな大きな事故を起こしてしまった。彼女の手術が終わったら挨拶に行こう。」

言うなら……今しかない。人生で初めてのこと。

「お父様、私は神無月に戻ります。且功さんを諦め神無月のために生きます。ただ……最後に私の我が儘を聞いてください。且功さんを……如月家との取り引きを再開してください。その我が儘を聞いてくださるのなら私は跡継ぎのために他の殿方と婚約を致します。且功さんを助けてください。お願いします。」


今の私にはもう且功さんの側にいられる資格はない。むしろ私は消えるべき存在。それならばせめて……最後に且功さんのために……何かしたい。




「初めてだな。お前が誰かのために頭を下げるというのは。私はお前のことを愛している。だから愛のない結婚なんてさせない。それが神無月の衰退に繋がるとしても。私は……神無月家はこれから様々な争いに巻き込まれていくだろう。その争いに巻き込まれるのは私と麗華だけでいい。お前は好きな未来を生きなさい。彼らといたいならその未来を築きなさい。お前はもう1人で生きていけるのだから。」


そう言ってお父様は私の頭を撫でてくれた。

「お父様……今までお世話になりました。私をここまで育てていただいて本当にありがとうございました。私は、これからの人生を彼らと共に生きます。」
「嬉しくて泣いているのか……?彼女がお前を変えてくれたんだね。幸せになりなさい。」


もう、私は神無月には戻らない。そんな我が儘を聞いてもらえるだなんて思ってもいなかった。


祝福と……悲しみの涙が溢れ出た。早く、命(みこと)に報告しに行きたい。
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