人間オークション       ~100億の絆~
咲月から連絡をもらい命(みこと)の病室へと向かう。私が分かりやすいように廊下で待っていてくれたようだけど廊下にいたのは咲月ではなく且功さんだった。

「なにかあったのね……?」
「中に入れば分かる。」

そう言われて中へ入るとにこにこと会話をしている咲月と命(みこと)の姿があった。

これのどこに問題があるというの……?

「命(みこと)。」
「麗亜さん!来てくれたですね。」
「当然よ……私のせいであなたを傷つけたんだもの。神無月家を代表して貴女に謝るわ。本当にごめんなさい……。」

「麗亜さんは何も悪くないよ。麗華さんが理人さんを撃ったことは許されないことだと思ってる。でも、麗亜さんは何もしてない。あんなに恥ずかしいオークションで怖い経験をして辛い目に遭ってる。」

「貴女は本当に優しいのね。且功さんのために盾になれるだなんて他の人には」

「うう……!あーーーー!」
「命(みこと)……?」


突然命(みこと)が頭を抱えて暴れ出した。

「命(みこと)、大丈夫だ。無理して思い出そうとしなくていい。落ち着け、落ち着くんだ。」


今、咲月、何て言ったの……?私の頭がついていかない。


「まさか……記憶をなくしてるの……?」
「……そうだ。自分のことや麗亜、俺のことは覚えているんだが且功に関係することだけ、全て記憶を失っている。それに思い出そうとするたび、命(みこと)の身体がそれを拒否して暴れてる。」


中に入れば分かるって…このことだったの。

命(みこと)が助かったと聞いたとき神様は本当にいるのだと感動した。それなのに……こんな残酷なことが起こるなんて……

「命(みこと)、疲れただろう。もう今日は眠るんだ。俺たちは外で食事をとってくるから。」
「うん、わかった。」
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