人間オークション       ~100億の絆~
麗亜に連れられ談話室まで来た。話しがあるならあの場で話してくれた方がいいんだけど……

「咲月、伝えるかどうか迷ったけど伝えたほうが良いかと思って……。」
「それなら要件を早く言ってくれるか?命(みこと)の世話が……」

「命(みこと)を且功さんに返したくないから……?」
「は……?」

「最初から見ていて分かっていたわ。貴方が命(みこと)に思いを寄せていること。冷たい態度をとっているようで本当は誰よりもよく見ていること。使用人は主に似るだなんて聞いたことあったけど本当のことなんだと感心した。でも私には且功さんがいる……だから貴方たちが恋愛に走っても構わないと思っていた。」

「何が言いたいんだ?はやく要件を言え。」

「且功さんが……消息を絶った。」


今なんて言ったんだ……?

「どういう意味だ…?」
「あら、命(みこと)への恋心は否定しないのね。」
「そんなことはどうでもいい……且功がどうしたんだ?」

「私にも分からない……だけど2日前の夕方、家のどこにもいないことに気がついた。」

俺が命(みこと)との時間を楽しんでいた間に且功が消えた……だと?


連絡が少なくなったのは仕事が忙しかったからじゃないのか……?

「今、どうにか且功さんと連絡をとれるように何回も携帯に電話をかけているけれどずっと繋がらないの。本当は貴方が命(みこと)との時間を楽しんでいる間に見つけて何も無かったことにしたかったけれどさすがに限界が近づいているわ。」

「わかった……俺の方でも且功に連絡をとってみる。とりあえず今は命(みこと)の所に戻らないと……」

「貴方って軽薄な人間なのね、咲月。大切なはずの元主であり家族が消えたというのに命(みこと)だけを優先するなんて。」
「なん…だと……?」

「試すようなことをしてごめんなさい。でも、これで分かったわ。貴方は且功さんよりも命(みこと)ことが大切。つまり、命(みこと)を選ぶということね。」

そう言って怪しく笑う麗亜。さっきからなんなんだ……俺の何を試したって言うんだ…?
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