敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「この話、誰も幸せになってないのよね……」

 イサベルとディエゴはもちろん、彼らの両親、そしてイサベルと結婚した夫だって、つらかったはずだ。妻が自分でない相手を想い、そのために命を落としてしまうなんて。

 やっぱり政略結婚なんて、するものじゃない――。

 物語に自分の境遇を重ね、複雑な思いに駆られていたそのとき、寝室のドアが開いて叶多くんが戻ってきた。

 ハッと我に返って振り向くと、ゆったりしたスウェットパンツに上半身裸の彼が、微笑んでベッドに歩み寄ってくる。まだ少し濡れた髪からキラキラとした水滴が滴り、肩にかけたタオルで時折それを拭った。

 その姿があまりにもセクシーで、忘れかけていた緊張が一気に舞い戻ってくる。

「よかった。先に寝ていたらどうしようかと思ったよ」

 ホッとしたように言って、ベッドに腰かける。ジッと私を見つめる眼差しは、蕩けるように甘い。

 その空気に飲み込まれる心の準備がまだできず、私は話を逸らすように手の中の本を彼に見せた。

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