戻ってきたんだ…(短編)
「最後に、僕を好きになってくれて、ありがとう」
君から受け取った、たくさんの気持ちを
僕はきちんと返せていただろうか?
我ながら、素直じゃなくて、愛想もなくて、
とんだ天邪鬼だとは思ってる。
好きという言葉だって、ちゃんと口にしたのは、数えるほどしかないと思う。
でも、本当に、心から君を想っていた。
大切に想っていた。
この気持ちは君に、伝わっていた?
生前は恥ずかしくて言えなかったけど、今なら言える。
「僕も、紗梨奈のことが好きだ。
誰よりも大切で、愛おしくて…離したくない。
そう思ってた」
「私も、思ってた。
ううん、思ってる」
紗梨奈は僕の袖をぎゅっと掴むと、
涙を堪えようと唇を噛んだ。
「………ばか、何で今そういうこと言うの」
「最後にどうしても言っておきたかったんだ」
「………ばか」
彼女は何度もそう呟いた。
その声は今にも消え入りそうに弱々しくて
とうとう堪えきれなくなった涙がぽろぽろと零れ落ちる。