戻ってきたんだ…(短編)
「ばか…ばかばかばか!
笑顔で見送らせてよ…泣かせないでよ……自分で笑えって言ったくせに」
「ごめん」
「……謝らないでよ、ばか」
「ごめんな………」
僕は彼女の頭を優しく撫でると、
そっと顎を持ち上げた。
そしてゆっくり顔を近付ける。
「紗梨奈、
……愛してる」
自分でも驚くくらい甘い声が出た。
それに彼女も戸惑ったようで、
顔が一気に赤くなる。
軽く触れた唇は
感触はなくても、とてもあたたかくて。
紗梨奈もそれを感じたように、優しく微笑んでいた。
「翔…会いに来てくれてありがとう。
大好きだよ」
「僕も……大好きだ」
すーっと光に溶け込んでいくような感覚。
ああ…本当に時間切れだ。
最期に見られたのが、笑顔でよかった。
どうか、幸せに……。
幸せになれよ…。