Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「え!それじゃ、これは牡丹鍋!?わあ、珍しい!楽しみです♡」
みのりは古庄父の武勇伝に、ニコニコしながら応える。
「…な、仲松先生♡かわいいなぁ…」
もうこれで、みのりは古庄父のハートをガッチリと掴んでしまった。一歩間違えば〝あざとい〟と思われかねない言動も、みのりだととても自然で全く嫌味がない。
「ささ、こっち来て!食べて食べて!」
手招きされた場所に、みのりは遼太郎と共に落ち着き、
「今日、お鍋にしようって言ってたから、ちょうど良かったね」
と、遼太郎にも満面の笑みで囁きかける。さっきまで、べそをかいてたのが嘘みたいに楽しそうだ。
「俺、牡丹鍋って、初めて食べます」
遼太郎も楽しもうと、古庄母に装ってもらうのを待ち構えている。
「そうか…、俺は食い飽きてる…」
古庄が肩をすくめながらそう言うのを聞いて、みのりも遼太郎も笑いを漏らした。
でも、目の前に出されていたのは、牡丹鍋だけではなかった。ジビエをふんだんに使った〝ご馳走〟の数々が並んでいる。
「狩野くん、これは鹿肉の唐揚げなのよ。食べてみて」
古庄母が遼太郎を名指しして、大皿に載った唐揚げを勧めてくる。というのも、好き嫌いのない遼太郎は、気持ちの良いくらい食べっぷりがいいからだ。