恋の魔法は間違えないで下さい!
「穂高くん?」

穂高くんが俯いたまま反応がない。

「大丈夫?」

私が近寄ろうとすると、穂高くんは、

「来ないで」

とぽつりと言った。

「今、俺絶対顔真っ赤だから」

穂高くんの顔は隠れて見えないが、確かに耳が赤くなっている。

「え、なんで?」

「好きな子に近づかれて赤くならないとか無理だから」

穂高くんの言葉に私も真っ赤になってしまった。

穂高くんは本当に私のことが好きなんだ。

でもそれは桜の魔法で、嘘の好きで。

「ごめんね、穂高くん」

「なんで音葉ちゃんが謝るの?」

「私が穂高くんに桜の魔法をかけなければ、穂高くんがその真っ赤な顔を向けるのは私じゃなかったはずだもん」

「音葉ちゃん、勘違いしてるよ」

「え?」

「きっとこれから一緒にいれば、俺は魔法が溶けても音葉ちゃんに恋してる。何故かそんな予感がしてならないんだ」

穂高くんが私に近づく。

「あ、触っちゃダメなんだったね」

「でも覚えて置いて、音葉ちゃん」

「俺が触れたいのは音葉ちゃんだけだよ」

穂高くんが私の顔に1ミリの所まで手を近づける。

「音葉ちゃんのお願いなんでも一つ聞くから、触れていい?」

穂高くんの言葉にさらに顔に熱が集まるのを感じた。

私は返事が出来ない。

「ごめん、我慢できない」

穂高くんが私の頬を優しく撫でる。

「音葉ちゃん、早く俺を好きになって」

そう言った穂高くんの顔はどこか寂しそうだった。
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