悪役令嬢にそんなチートな能力を与えてはいけません!
 いつも入り浸っているサロンは高級貴族とその招待客のものとされているんだけど、ジュリアン様、リカルド、ダンガルド、今年からジョエルが使っているので、誰も近寄らない、私達専用サロンになっていた。
 サロンでお茶を飲んでいたジュリアン様を見て、セシルが頬を染めた。それを目撃してしまって後悔した。
 バカね、私は。なにも自らジュリアン様とセシルの接点を増やさなくてもいいのに……。
 でも、チョコレートを食べて、うっとりしているセシルはかわいかった。



 セシルは裏表のない本当にいい子だった。聖女なだけあって、癒やし系。
 甘いものの話題から、ほどなく打ち解けて、私に初めての女友達ができた。
 友達って言っていいわよね? まだ早いかしら?

 サロンにもセシルが顔を出すようになって、リカルドもダンガルドもジョエルさえも大歓迎した。
 ジョエルはこれを機会に姉離れするといいわ。
 女友達っていいわね。楽しくって仕方ない。
 私はセシルに夢中になった。ジュリアン様が『少しは僕もかまってよ』と文句を言うほど。

 私達と一緒に行動しているし、聖女ということで、最初はセシルも遠巻きにされていたけど、彼女の親しみやすい人柄にだんだんクラスメートも受け入れていき、気がついたら、私よりみんなと仲よくなっていた。

「ルビアナ様は完璧すぎて、近寄りがたいんですよ」
「私なんて全然完璧じゃないのに」
「うふふ、お茶目でかわいらしいところもあるのにね」
「それも違うわよ」

 私は赤くなる。
 綺麗とは言われるけど、かわいいなんて、ジュリアン様以外に言われたことないわ。

「ほら、そういうところ!」

 セシルがおかしそうに笑う。
 彼女とじゃれているうちに、クラスメートとも少し打ち解けてきた。

 そんな楽しい新学期を送るうちに、私は大事なことを忘れかけていた。

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