眠り姫と生贄と命の天秤
「そんなことない。瓶の中身を燃やそうとしたとき、矢を斬ってくれたでしょ。助けられなければ当たってた。多分、今晩はここにいても大丈夫だと思う。だから休んで、考えよう」

 厳密にいえばほかの追手が来ている可能性はある。けれど少なくとも大量の煙を浴びたジウィードの軍勢は動けないはずだし、キトエにこれ以上負担をかけられない。呪法を解かなければ、この先逃げ続けることはできない。

 ジウィードは何か言っていなかったか? 昏睡の呪法。『眠り姫』。毒とは違い、浄化の魔法では消えなかった。魔法と呪法の違いは何だったか、必死に思い出そうとする。

 キトエが矢を受けた直後は動揺していて思い出せなかっただけだ。絶対に読んだことがある。落ち着け。思い出せ。そう心の中で自分自身に言い聞かせる。

「リコ、もう少し、緩くていい」

 手に触れられて、我に返る。包帯を巻いている途中で、考えて手が止まっていたせいできつく締めすぎてしまったようだ。

「ごめん! 余計に痛くしちゃって」

 力を入れすぎてしまった。

 瞬間、思い出した。

 力だ。呪法で受けた影響は、一定以上の力でしか解けないのだ。

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