Will you marry me? 〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜
その日、謙太郎さんは自身で運転する車で、いろいろなところへと連れて行ってくれた。
お茶を飲んだり、ショッピングをしたりとまるでデートのようで、ドキドキしてしまうのは仕方が無いと思う。
そして、洋服や日用品をいろいろ買ってくれた上に、実家に寄ってくれた。 ちょうど忙しい時間帯だったこともあり、誰にも会うことなく、必要なものをまとめて実家の沙月亭を正面から見据えた。
父は本当に帰ってこないと思っていたのだろうか。そんなことを考えていると、彼が車の助手席を開けてくれる。
「父上には紘一が連絡をいれているから大丈夫だ」
「ありがとうございます」
なにを言えばいいかわからず、私はそれだけを答た。
隣にいた彼が少し間を置いた後、私を見下ろす。
「菜々には俺がいるから」
どうしてこう私が不安な時がわかってしまうのだろう。感情を出してもも仕方がないと思って生きてきたからか、誰にも悲しい、寂しなど気づかれたことがないのに。
謙太郎さんのタイミングのいい言葉は、気持ちを殺そうとしてきた私を揺さぶる。
何も言えず彼の目を見ると、まっすぐに見つめ返してくれて、照れるよりも泣きたくなった。