神様、僕に妹を下さい

Act.129 サイド晶(あきら)

 「ねー桜場、池にアメンボがいるよ」

 学校の中庭の池にアメンボが、水面をスイスーイと滑っている
 私も何も考えず、水面を歩けたらいいだろうなぁ

 「ねぇ桜場ってば、聞いてるの?」

 「うるさい。お前なぁ、誰のせいでこんな事になっていると思ってんだよ」

 「私のせい・・です。だから手伝いに来たでしょう」
 桜場に一喝され、放り投げていた竹ぼうきを掴んで立上がった

 桜場と私(正確には桜場ひとり)は授業中に騒いだ為、バツとして中庭の掃除を課せられた

 「まさか桜場、焼きそばパンを噴出すとは思わなかったんだもの」

 「お前が突然、あんな・・あんな質問してくるからだろうが!」
 桜場は顔を紅潮させ、竹ぼうきを振りまいた

 そりゃぁ、悪いと思ってるけどさ

 古文の時間、隣の席で教科書の影に隠れながら、のんきにおやつを食べている桜場を見ていたら、聞いてみたくなった

 『桜場って、キスした事あるの?』って
 『その相手は、自分の好きな人だった?』と

 そしたら、桜場はムセはじめ、前の席の人に焼きそばパンを吐き出したのだ

 授業は20分中断。桜場は先生に怒られる、中庭の掃除を言い渡される、古文のプリントのコピーをクラス全員分言い渡される・・と酷い目にあったのだ

 「さっさと終わらせようぜ。まだ、コピーも行かなきゃなんねーんだ」

 「コピーは私がやるから、桜場は部活に行って。ごめんね」
 桜場はサッカー部
 休み時間もサッカーボールを手放さない程のサッカーバカなのだ

 ザッツ、ザッツと落ち葉をかき集め、塵取りで掬い取る

 
 「中2の2月14日、チョコを渡されると同時に、不意をつかれてされた」
 桜場は池の淵に腰掛けながら足を組んだ

 「何を?」

 「相手は、特に好きでも嫌いでもない奴。知りたかったんだろ」
 ソッポを向く桜場の態度に私は『あっ』と呟いた

 質問・・答えてくれたんだ。同時に私の顔も赤くなる

 「ありがと」

 「礼なんか言うな。照れるだろ・・で、お前はどうなんだよ」

 「わっ私!?」

 「人の事ばっか聞いて、自分のを言わないのはナシだぜ」
 え・・と。私は桜場の横に腰をかけた
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