結婚指輪を落とす夫を、笑う嫁。



私が母たちの立場でも、やはりこの表情をするだろう。



なんだか、ますます笑えてきてしまう。



でもここは、自己完結させてもらおうかな。



「大丈夫です、ちゃんとわかってますから」



私が言うと、みんなはお互いに顔を見合わせて、



「あ、ああ、そうなの?…あはは、ならいいわ」



と乾いた笑いをした。



当の本人、リュウくんは、わけがわからないといった顔で、私たちを見ていた。



いいわよ、わけがわからなくたって。



今のリュウくんには、返してあげない。






記憶が戻るそのときまで、私が預かっておくね、リュウくん。








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