彼はまだ、式場に来ていなかった。



私は一足先に担当のウェディングプランナーに挨拶をして、控え室に連れていってもらった。



部屋に入ると、最初に真っ白なウェディングドレスが目に飛び込んできた。



たったそれだけのことで、それまで何ともなかった心臓の動きが、急に速くなった。



試着やサイズ調整で、何度か袖を通したドレス。



これを着るのも、今日が最後。






―…『私たちクリスチャンじゃないのに、当たり前のように教会をさがしてウェディングドレスを試着して、って準備してたでしょ』






沖縄で、ふと思ったこと。



あのときは、教会で式をあげることに少しの罪悪感すら抱いた。



でも、今は違う。



自分たちで作り上げてきた結婚式が、誇らしい。



よかった、彼が「日本特有の文化」と言ってくれて。



あとは幕が開くのを待つだけ。



「リュウくん、早く来ないかなー」






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