あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした

秋の終わりに


あと少しで秋が終わる。
あやの先輩が学校に来なくなってから1ヶ月が経っていた。
僕は最初はろくに眠れず、ご飯もなかなか食べれなかった。
けれど猪里に言われたんだ。
『綾野先輩が帰ってきたらその顔じゃ見せられないでしょ?』
って。
その言葉には納得できた。
僕の顔は見なくてもわかるくらい酷いものだったと思うから。
だから食べたんだ。
喉を通らなかったご飯があやの先輩が帰ってくるかもしれないと思ったら不思議と通るようになったんだ。
どうして猪里が『綾野先輩ならきっと優星にまた会いに来るよ』と言ったのかはわからないけど僕はずっと待っている。
あやの先輩が会いに来るのを……。

そして放課後。
僕は鞄に荷物をつめ、いつも通り昇降口へと向かった。
今日は何時まで待とう?
あやの先輩がもしかしたら遅れてくるかもしれない。
そう思って僕はあやの先輩が来なくなった日からずっと昇降口で待っていた。
いつもあやの先輩が立っているところで…。
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