全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
「ねぇ、サイラス」

「なんでしょうか、お嬢様」

「サイラスが一緒に来てくれない?」

「え?」

 サイラスはぽかんとした顔でこちらを見る。私はもう一度繰り返す。

「サイラスがエスコート役をしてちょうだい! それならきっと私、パーティーでも楽しく過ごせるわ」

 あんまりいい案を思いついたので、嬉しくなってしまった。

 そうだ、薄情な身内や知り合いの貴族に頼む必要なんてないのだ。それに、サイラスと一緒のほうがずっと楽しいと思う。


「い、いえ、私などがエスコート役ではお嬢様に恥をかかせてしまいます。何とかクリス様かディラン様を説得してきますので……」

「お兄様たちについて来てもらうよりも私、サイラスと一緒がいい! ね、いいでしょう? 服はもちろん私が用意するから。この前レストランに行った時もサイラスはちっとも違和感がなかったわ」

「いえ、やはり、もっとほかに……」

 おろおろしているサイラスに一緒に来て欲しいと頼み込む。サイラスは散々迷った顔をしていたけれど、「嫌なの?」と悲しげな顔で尋ねたら、ついには折れて了承してくれた。

「ありがとう、サイラス! なんだか楽しみになって来たわ」

 会場ではどうせカミリアに嫌味を言われたり、ジャレッド王子に睨まれたりするんだろうけれど、サイラスが来てくれると思うと途端に心が浮き立ってくる。

 いいわ。どうせ招待から逃れられないなら、楽しんでやるから。

 サイラスはすっかり機嫌がよくなった私を、何とも言えない顔で見つめていた。
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