冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

極秘任務

朝、香世は久々に寝過ごしてしまって
慌てて着替えてバタバタと居間に降りる。

居間にはいつものように新聞を読む正臣が居た。

「おはようございます。
申し訳ございません、遅くなってしまいました。」
正座をして深く頭を下げる。

正臣はふっと笑って、
「おはよう。
昨夜は遅くまで付き合わせたのは俺だから、気にするな。」
そう言って、女中に朝飯を持って来させる。

2人の女中は静々と2人分の朝食を膳に乗せて持って来る。

「ありがとうございます。」
香世は頭を下げてお礼を言う。

「昨日、夕飯をなぜ作らなかった?」
不意に低い声で正臣が言う。

2人の女中はおどおどと顔を見合わせて答えに詰まる。

「あの…私が要らないと言ったのです。
2人のせいではありません…。」
香世もビクビクしながらそう告げる。

「彼女は大事な客人だ。
例え本人が要らないと言っても三食作れ。
次は無いと思え、仕事を放棄したとみなして出て行ってもらう。」

冷たく放たれた言葉は昨夜とはまるで別人のようで、香世の心さえも凍らせる。

「も、申し訳ありませんでした。」
2人は正座して深く頭を下げる。

「香世は遠慮しなくて良い。
自分の家だと思って寛いで欲しい。
何かあったら逐一報告を。」

香世に向けられる目は昨夜と同じ優しさを感じ、ホッとする。

「食べるぞ。」

正臣が箸を持つから、香世も急いで箸を持ち頂きますと両手を合わせる。

女中は足速に頭を下げて部屋から下がる。

香世は少し可哀想だと同情し、
襖を閉めて去って行く2人を目で追う。

「香世、気にするな。昨日は女中が悪かった。ちゃんと三食食べて俺を安心させてくれ。」

「は…い。すいませんでした。」
食べる手を止め正臣を見る。

「週末は一緒に花見に行く。
体調をを整えるよう良く睡眠を取って欲しい。それが香世の仕事だ。」

少し体調が思わしく無い事に気付いていたのかと、ドキッとしてしまう。

「それは…牛になってしまいますよ。」
香世はワザとおどけて言ってみる。

正臣はフッと笑って香世を見る。
「香世はそのぐらいでちょうど良い。」

朝食を食べ終え、正臣様の着替えを手伝う。

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