冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
街を抜けると、急に大きな赤い門が道を遮る。

ああ、ここからが花街なのね。

ぐるっと赤い柵で覆われたその場所は、
柵の向こう側はまるで別世界のように、
着飾った女達が昼だと言うのに男と腕を組んで歩いている姿が見える。

人力車は門で一旦止まり、
仲買人が通行手当てを門番に見せる。

門番は香世を下から上まで舐めるように見て来る。

香世は背筋がゾッとするのを感じる。

両手をぎゅっと握りしめ香世はその目線に耐える。

「これはまた、上物だなぁ。
いくらになったんだい。」
門番と仲買人はしばし話し出す。

「200円だよ。破格だろ?
落ちぶれた公爵家の御令嬢だ。
今夜からでも部屋を取るだろうから、
あんたも金があったら買ってみるといい。」

下品でいやらしい話しを本人を目の前にして男達は話し出す。

香世はぎゅっと握りしめた手のひらに意識を持っていき、泣かないように真っ直ぐ前を見据える。

私の価値はたった200円…

いいえ、200円あれば高級車が買えるわ。

私の家族がその200円できっと一年生き延びる事が出来るはず。

悲観してはダメ、心を強く保つのよ。
自分自身をそう励ます。
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