冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「すいません、お待たせしてしまって。」

香世は正臣がいる玄関の上がり框まで小走りで来て、段差に躓いてしまう。

「キャッ!」
咄嗟に目を瞑る。
寸前のところでまた正臣に抱き止められる。

「何度目だ?少しは気を付けてくれ。」

正臣に苦笑いされ香世は罰が悪い。

だけどまた抱き上げられたまま、
なかなか降ろして貰えず恥ずかしくなる。

「あ、あの…ごめんなさい。気を付けます。」

やっとそっと下されて足が床に着く。

「あらあら、香世様大丈夫でしたか?」

後ろを追って来てくれたタマキがやっと辿り着き、着崩れを直してくれる。

「ありがとうございます…。」
真っ赤な顔で香世は俯く。

「振袖は踏みやすいですからお気を付けて。
旦那様、ちゃんと見てあげてくださいね。」

正臣もタマキに、
「ああ。」
と素っ気なく答える。

「足、挫いてないか?」
正臣が草履を履く香世の横に屈み込み
足首に触れてくるからドギマギしてしまう。

「だ、大丈夫です。」

「仲が良いのはいい事ですが、早く行って来て下さいね。」

半ばタマキに追い立てられるように前田が運転する車に乗り込む。
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