冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
玄関に辿り着き呼び鈴を鳴らす。

しばらくするとバタバタと足音が聞こえ
玄関扉が開く。

「はい…。えっ⁉︎香世お嬢様⁉︎」
そこには驚き顔で固まるマサが居た。

「マサさん、お久しぶりです。
お元気そうで良かった。」

「お嬢様ー!!」
マサは周りを気にする事無く香世に飛び付き抱きしめる。

「お、お元気でしたか?
どうしたものかと案じておりました。」
マサは香世を抱き締めたままシクシクと泣き始める。

香世は笑いながら、
「マサさん、お父様から何も聞いてない?
私、花魁にはならなかったのよ。
ここにいる正臣様が助け出してくれたの。」

マサはハッとして香世から離れ顔を正臣に
向ける。
「も、申し訳ありません。」
マサが慌てて頭を深く下げる。

「初めまして、二階堂正臣と申します。
香世殿と婚約させて頂きました者です。
本日は、ご家族様に挨拶をと思い来ましたが、姉上と弟君はご滞在ですか?」

正臣は爽やかに笑いながらマサに告げる。

「まぁ、なんて事でしょう。
お二人共ご滞在です。今、お連れしますので、どうぞこちらにお入り下さいませ。」
口に手を当て2人を交互に見つめる。

「以前、お嬢様が家を出た日に軍人様が
尋ねて来られましたが…、
その方は…えっと真壁様と言われましたが…?」

「真壁は自分の部下です。
香世殿を連れ帰るように指示をしたので、
その節はご迷惑をお掛けしました。」

正臣は丁寧に山折れ帽子を取り頭を下げる。

「私のような者にまで頭を下げ無いで下さいませ。…どうぞ、居間の方でお待ち下さい。」

恐縮しながらマサは2人を居間に案内する。
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