冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

「…その間に腹違いの兄妹が2人居るが…
俺もちゃんと会った事は無い。
…複雑で悪いな。」

「そう…なんですね。
幼少時代はお寂しかったですか?」
俺はあぐらをかいて姿勢を崩し、香世を抱き上げ膝で囲う。

「寂しいと思った事はないな。
1人で食事をするのは当たり前だったし、
習い事もいろいろやっていたから、
それぞれ忙しくてあまり兄弟喧嘩もした事が無い。」

香世は体制に戸惑いながらも振り返り俺を見る。
「それは寂しかったと言って良いと思います。」

近いと思ったのかパッとまた前を向いてしまうが、そっと後ろから抱きしめて、

「寂しかったのか…。
そう言う感受性は持ち合わせて無いが、
香世が側に居ないと寂しいとは思う。」

「私は絶対お側から離れませんから安心して下さいね。」
そう言って抱きついて来てくれる。
可愛いなと、純粋に思う。

「ありがとう。
…父親は不義理で薄情な人間だが、
俺は他にうつつを抜かすような男では無いから心配するなよ。
母親もどうしようも無い人だから…
会っても驚かないでくれ。」

令嬢だった母も父の浮気を知ってから、
好きに遊び回り若い男を側に置くようなどうしようも無い人間だ。

「俺の家族は世間体の為だけに家族を保っているに過ぎない連中だ。香世の兄妹のような愛情は無いかもしれない。」

香世を抱きしめ返しながら、
こんなに誰かに執着したのは初めてだと実感する。
愛しているだけでは言い表せない感情がそこにはある。


「おはようございます。」
階段下からタマキの声が聞こえてきて、
香世が慌てて俺から離れる。

「はい、今、行きます。」
パタパタとお布団を畳んで自分の布団を運ぼうとする。

「俺が片付けておくから。」
布団を代わりに持って香世の部屋に運ぶ。

「ありがとうございます。
正臣さんは後からゆっくり来て下さいね。」
と、パタパタと1階に降りて行った。

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