冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
はぁーっと深いため息を吐く。

香世の心を手に入れるのは容易では無いと思う。

軍人の家に育ち、武道に明け暮れた少年時代を過ごした。
強い者だけ生き残れるのだと叩きこまれてきた。

そんな俺に女子(おなご)の扱いなんかさっぱり分からない。

祖父からは軍人たる者、恋や愛にうつつを抜かすなと言われてきた。
 誰かに心を奪われると肝心な時に命を捨てられ無い、軍人として駄目になると…。

それなのに…

香世を誰かに奪われると思うと居ても立っても居られなかった。
そのくせ、手に入れたのに優しくする事も出来ず泣かせてしまう。

香世の一挙手一投足に心が揺れ乱れる俺は、確かに弱くなったのかも知れない。

まだ泣いているのだろうか…。

嫌われたか…怖がられたか…
どのみち、だからと言って手離せはしない。

自分の不甲斐無さに天を仰ぐ。
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