冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
真子ちゃんに歌詞を教えながら一緒に歌う。

幼い弟の龍一を思い出す。
弟と一緒に歌った日の事を…
随分と前の様に思えてしまうから寂しくなってしまう。

「私にもね。今年尋常小学校に入る弟がいるの。同じ小学校だと良いね。」

「そうなんだ。なんて名前の子?
学校行ったら探してみるよ。」
真子が嬉しそうに訪ねてくる。

「樋口龍一って名前なの。
背は小さい方だけと元気な子よ。
人見知りだからお友達が出来るか心配なの。」

「じゃあ、うちが同じ学級だったらお友達になってあげるね。」

「本当?それは心強いわ。
龍ちゃんも『桜』の歌が大好きだったの。
1人でも歌ってくれてると良いけど…。」

「龍ちゃんに会いたい?」

「それは、もちろん会いたいけど…、
家を出た身の私だから帰れる筈も無いし、
二階堂様が許さないわきっと。」

「うち、二階堂様嫌いじゃ無いよ。
笑わないからちょっと怖いけど、
あんなに綺麗な男人、見た事無いよ。
それに、うちを学校まで出してくれるなんて
そんな人なかなかいないよ。」

「そうね…。良い人だよね。」
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