冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
お昼を食べ少し休んでから、真子ちゃんと一緒に箪笥部屋へ行く。

今日着る着物は既に風通しされていて綺麗に広げられていた。

「姉さんの着物、桜だね!綺麗!!」

薄桃色の着物には桜の花びらが描かれていて、一目見てとても上等な物だと分かる。

真子ちゃんの着物も春らしく、薄い黄緑色に黄色いたんぽぽが描かれている。
「真子ちゃんの着物も可愛いね。」
真子が、嬉しそうに眺めている。

「先に真子ちゃんに着せてあげるね。」

「うち、こんな上等な着物着るの初めて。」
帯も煌びやかな金糸の蝶が飛んでいる。

「本当に綺麗な着物ね。」

私は丁寧に真子ちゃんに着付けていく。

嬉しそうに真子ちゃんは覚えたての『桜』の唄を歌う。

「失礼します。なんだか楽しそうですね。」
そう言ってタマキさんが入って来る。

「旦那様、お早くお帰りのようですからお手伝いさせて頂きます。」

私は急いで自分の着物を脱ぎ着替え始める。

タマキさんも真子ちゃんも一緒になって『桜』を歌い始めるから、私も楽しくなって着付けながらつい一緒に歌ってしまう。

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