冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「二階堂様の所で働かせて頂いている
女中の1人はうちから去年出た子なんですよ。」
寮母にそう教えられ、正臣が以前からも慈善活動をしていた事を知らされた。

かつては伯爵令嬢だった香世にとって、
恥ずべき事だった。
自分が贅沢な生活を送っていた頃、
一方では慈善活動に尽力する人々がいた。

「もっと、このような場所が増えればいいのですが…未だ駅や河川敷で野宿をして過ごす子供が絶えません。」

近代化が進み世間は裕福になってきているはずなのに、とり残された子供達がいるのだと実感する。



真子とひとまずお別れをする。

「真子ちゃん、寂しくなったらいつでも何時でも会いに来てね。」
香世は真子を抱きしめる。

「姉さん、ありがとう。姉さんに会えたから
花街から出られたんだ。
うち、これからしっかり勉強して里の家族を支えられる人になるよ。」

この小さな体1つで健気に、
遠く離れた家族の為頑張る真子を応援したい。

「じゃ、また明日ね。」

真子が手を振って送り出してくれる。
香世は正臣の車の助手席に座り真子に手を振る。
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