冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
最後に向かったのは、
真子が生活する孤児院だった。

これから別々の生活になるのだと実感すると、香世は急に寂しくなる。

真子とは昨日初めて会ったばかりだけど、
まるで妹のように可愛くて弟に会えない寂しさを埋めてくれるようだった。

それに…今夜から屋敷には正臣と2人きり…。

心細さと寂しさを感じずにはいられない。

孤児院には、今15人ほどの子供達が居て
下は2歳から上は14歳まで、
みんなそれぞれ家事を分担し仲良く生活をしていると言う。

15歳以上の子は奉公に出たり、
仕事を探し自分で自立しなければなかないがそれまでの衣食住は保証される。

全ては寄付と善意で賄われており、
正臣のように理解ある人々に寄って支えられているらしい。

このような場所がある事を香世は今まで知らなかった。
自分の無知さを知って落ち込む。

「産まれて直ぐに置き去りにされる子もいるんですよ。」
寮母がそう話す。

ここに入れる子供はまだ幸せな方だと言う。

例えば香世や真子のように親に売られる子も未だ絶えないし、若いうちに奉公に出されて厳しい体罰を与えられ体を壊してしまう子もいる。
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