悪役令嬢は友人の恋の行方が気になる
このまま行けば、王太子と接触することなく舞踏会を終えられそうだったが、そううまくはいかないものだ。
目の前に影ができたと思ったらすぐそばに王太子が現れた。取り巻く令嬢たちを引き連れてきた彼は、少し緊張感を含む声で
「踊っていただけますか?」
と、マリアに手を差し出す。

まずい。
これではマリアが嫉妬の対象になってしまう。現に周りの令嬢たちは羽根飾りのついた扇で口元を隠し、眉間に皺を寄せている。あんなに眉間に力を入れていたら皺が取れなくなるのでは、と心配してしまうくらいだ。
咄嗟にステファニーはマリアを押しのけて
王太子の手を取った。
「殿下、バイロン侯爵家のステファニーと申します。お会いできて光栄ですわ。」
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