【中】今さら、付き合いたいなんて。
無慈悲にチョコを持ち去り、八雲くんは背を向けて階段の方に向かって行きました。

私は空振った手を窓枠について、八雲くんに文句を言います。




「バカー!」




精一杯の罵倒だったのに、八雲くんは背を向けたままひらひらと手を振って答えました。


突然来てチョコを強奪していくなんて、酷いです!

八雲くんだって校則破り上等の不良だったのに!




「仲いいな、お前ら。っていうかあいつ、私のこと眼中になかっただろ」


「もーっ、八雲のバカ、ほんとにバカ! 芹香、せっかくくれたのにごめん」


「いいって。ほら、もう1本やる」


「ほんとに!? ありがとー!」




芹香にチョコを貰い直した私は、チャイムの音を聞きながら地面にしゃがみ込んだのでした。


ふふん、八雲くんも甘いですね。



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