庇護欲強めの彼に守られ、愛されました
「うわぁ~~~!! ヤダヤダ! 大声を出してごめんなさい。私、本当にそれが世界一嫌いなんですよ!!」

「……ああ、ゴキブリ?」

 その名前ですら耳にしたくないくらいだ。
 玄関付近の壁に背中をくっ付けて怯えていると、剣崎さんが私の左手からスプレー缶をそっと奪って、敵を一撃で仕留めてくれた。

「もう大丈夫だ」

「ありがとうございます! これは本当に演技じゃないんです。それが視界に入っただけでもパニックになるのに、今日は至近距離で見ちゃったから悲鳴が……」

「演技だとは思ってない。その真っ青な顔色が証明してる」

 わめき散らした私を大げさだと(とが)めることなく、逆に落ち着かせようと彼はやさしく左腕を擦ってくれた。
 そのおかげで私は少しずつ冷静さを取り戻していく。

「キッチンペーパーはある? ティッシュでもいいけど。ついでに死骸処理をしとく」

「え、でも……」

「ちなみに俺は全然平気だから気にしないで」

 さすがに申し訳ないと思いつつも、彼の申し出をありがたく受け入れさせてもらった。
 剣崎さんは虫でもヘビでもカエルでも、毒さえなければ恐怖心はなく、素手で触れることが出来るらしい。
 本当はゴキブリもいけるみたいだが、私が怯えているのもあり、今は何枚ものキッチンペーパーで隠すように包んで丸めてくれた。

「本当にすみません」

「また困ったらいつでも呼んでくれて構わないから。俺が駆除するよ」

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