推し一筋なので彼氏はいりません
第一章
第一節
「俺と付き合ってください。」
とある春の日の放課後。
急に全く知らない人に校門で声をかけられ、
急にその全く知らない人に告白された。
「ごめんなさい。」
「え、即答……。」
「逆に可能性あると思ったんですか?
私あなたの名前すら知りませんが。」
「佐山 暁良。
2月10日生まれのB型、好きな食べ物はいちごです。」
「あ、はい。」
別に聞いてないしどうでもいいんだけど。
「俺と付き合ってください。」
「ごめんなさい。」
「即答……。」
「いやだからさっきもお断りしましたよね。」
「それは名前を知らないからかな〜って。」
え、この人の思考回路がわからない。
世の中の大半の人は、名前を知っただけで、はい付き合いましょうってなるわけがないと思う。
「違いますけど。ごめんなさい。
それじゃあ、私予定あるので。」
最悪。こんなことに時間を取られている場合ではない。
大好きな遥斗くんが家で待っているのだ。
明後日から4期が放送される大好きなアニメのために、3期までの計61話を1話1話丁寧に観返しているところ。
毎話遥斗くんが話しているところを何度も巻き戻しているからそれはもう進まなくて困っている。
というか何であの、サガラ?ハヤマ?なんだったか忘れたけど、あの人に告白されたのか。
スリッパ青だったし、多分1個上の学年で、胸元のバッジをみれば学科も違った。
あまりにも共通点がなさすぎて、何きっかけであの人が私のことを知っているのかさえわからない。
私は絶世の美女というわけでも、学年一位の学力があるわけでも、生徒会に入っているというわけでもないし。
まあいっか!
早く帰って遥斗くんを補給しよう。
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