推し一筋なので彼氏はいりません
《菅野愛衣 side》
「人の流れ落ち着いたしそろそろ行く?」
「うん。」
試合も終わってある程度人も減ってきたし、そろそろ動こうと席を立つ。
試合をしていたバスケ部の人たちは部員同士で話していたり、女の子に話しかけられていたり、さっきまでの雰囲気と打って変わって穏やかな雰囲気が漂っている。
「菅野さん。」
「佐山先輩。お疲れ様です。」
「ありがとうございます。
それに最後まで居てくれたことも。ありがとうございました。」
「いえ、別にお礼を言われることではないので。
じゃあ私はこれで。」
先輩の後ろにいる女の子たちの視線が痛いし、早くこの場から立ち去りたい。
「待ってください。」
「何ですか?」
「少しは付き合ってもいいかなって思ってくれました?」
え、今ここでそんなこと聞く?周りの視線が痛いんだけど。
まあそれでも初対面でいきなり告白された時ほどではないけど。
あの時は校門のすぐそばだったし、みんながちょうど帰り始めるタイミングだったから、相当な人数に見られていたと思う。
なんでこの人は時と場所を気にしないの……。
「なぜそんな話になるのかわかりません。
先ほども言いましたが、バスケが上手いのと付き合う付き合わないは結びつきません。」
「カッコいい惚れた!ってなる可能性も「ありません。」
「食い気味に否定された。」
「遥斗くんになってから出直してください。」
「えー、それは無理ですよ。だって次元違うし。」
「じゃあ諦めて。
私もう帰りますね。」
無理無理。これ以上ここにいたらいろんな人からの視線で身体に穴があいちゃう。