推し一筋なので彼氏はいりません



「どちら様ですか?」


そうこうしている間に、先輩が戻ってきた。


「山本拓斗です。
同じ作品が好きな人を見つけてつい声をかけてしまって。お連れの方がいるとは知らず、すみませんでした。
彼女さんには誓って何もしてないので!」


彼女ではないけど。


「菅野さんが良ければ、食事の間だけなら相席してもいいですよ。」


「え?」


「あれ、話したいのかなって思ったけど違いました?」


さっきと違って先輩もいるし、名前も一応教えてもらった。
同じ作品が好きな人と話してみたい気持ちもある。


「私は話してみたいとは思ってましたけど、でも先輩は?」


「菅野さんの隣に座る口実ができてラッキーだなって思ってます。」


そして満面の笑みで私の隣に座る。

先輩はそれが目的だったのかと思わせるほどニコニコしている。
いやこれはいつものことか。


「デートのお邪魔をしてすみません。」


山本さんは私の前に座りつつも、謝った


「別にデートじゃないので。彼女でもないし。」


「え、じゃあもしかしてそちらの方も同じ作品を愛するファン?」


「いえ。彼の引きがいいので、遥斗くんを引いてもらうために一緒にポップアップに。」


「なんというイケメンの使い方……!」


「彼がついてきたいと言ったので。」


「遥斗さんのことになると菅野さん楽しそうだから、その顔が見たくて。」


「そうだったんですか?」


「はい。」


デートが〜とか言ってたから、ほんとは別の事が良かったと思ってるものだと思っていた。

てことは私が遥斗くんに夢中になってたところを、佐山先輩にしっかり見られてたってこと?

恥ずかしすぎる。


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