推し一筋なので彼氏はいりません
そして案の定、何の問題もなく許可が取れた。
一応年頃の男女ということで、私の部屋ではなくリビングでということになったけど。
もうすぐ先輩が来る時間だと思うけど、母は昨日からずっとそわそわしている様子。
「ママ、少し落ち着いて。気が散る。」
「だってイケメンが来ると思うと緊張しちゃうじゃない?」
「別にママに会いに来る訳じゃなくて、ただ一緒に勉強するだけだから。」
「わかってるけど〜。」
ママがぐだぐだいってる間に、インターフォンが鳴る。
「はーい。」
「お邪魔します。」
「どうぞ〜。」
「いらっしゃい!
佐山くんね?愛衣の勉強みてくれるんでしょ?ありがとうね〜。」
「いえ。ただ僕が愛衣さんに会いたくて提案したことなので。」
「えっ?」
そんなことひと言も言ってなかったし、急にそんなこと言われたら照れるし、そしてママがきっと……。
そう思ってママの方を見ると、私と先輩を交互にみながら満面の笑みを浮かべていた。
「あらあらあら〜。
佐山くんは愛衣のこと好きなのねぇ。青春ね〜。」
「ママは静かにしてて。
私たちいまから勉強するんだから。」
「はいはい。ごゆっくり〜。」
ママがテレビの前のソファに座ったのを見て、私たちはダイニングテーブルに座る。
「母がうるさくてすみません。」
「大丈夫ですよ。
明るい方ですね。」
「ですね。いつもあんな感じです。」
「いいですね。」
「そうですか?」
「はい。羨ましいです。」
「先輩のお母さんはどんな人ですか?」
「うちの母ですか?
んー、あまり話さない人かもしれません。」
「うちと真逆ですね。
お父さんの方が賑やかだったり?」
「いえ、父もそんなに口数の多い方ではない気がします。」
「そうなんですね。
先輩はよく話してくれるので、意外です。」
「俺もそんなに興味がわかない人の前だと、割と静かですよ。」
「え、先輩にもそんな人いるんですか?
みんなと仲良しだと思ってた。」
「そりゃあいますよ。俺も人間なので。」
いつも人に囲まれてて、いろんな人に好かれてる姿しか見たことないから、みんな大好き〜みたいなタイプかと思っていた。
けどそうだよね。
先輩にも好き嫌いがあってもおかしくない。