ムーンサルトに 恋をして
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翌日、16時05分発の便に間に合うように空港へ向かった。
ジルが『空港まで見送りに行くから』と言ってくれたが、昨夜の出来事があって、顔を合わせづらい私は彼に嘘を吐いた。
……18時発の飛行機だと。
彼がホテルまで迎えに来るかもしれないし、空港に早めに到着するかもしれないと思った私は、出発時間より2時間近くサバを読んでまでして彼を避けてしまった。
彼と一夜を過ごしたことを後悔はしていない。
むしろ、譲との関係を綺麗サッパリ忘れることが出来るほど、彼との一夜は素敵な夜だったと思える。
キスも体も、相性は今までで一番良かった。
けれど、恋に発展するかと聞かれたら……たぶん無理がある。
私は毎日会いたいと思うタイプで、どちらかと言えば重い女かもしれない。
相手に依存するタイプでもあるから、恋人が出来たらその人中心の生活になってしまう。
東京とアメリカ。
年齢が近いとはいえ、あまりにも離れすぎている距離と、住む世界が違い過ぎて受け入れられそうにない。
だから、『一夜だけ』そう自分に言い聞かせて、彼の前から消えることを選んだ。
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羽田空港に到着した私は、ほんの少しだけ新しい自分と向き合うように春休みシーズンで混雑するターミナルを颯爽と歩き出した。
新宿駅行きのリムジンバスを待ちながらスマホの電源を入れると、沢山の留守電とメール受信が……。
もちろん相手はジル。
私を心配した彼が、連絡してくれたようだ。
もう東京に到着したと連絡しようか、それともごめんねと謝ろうか、悩んでいるその時。
ドンッ。
「あっ……」
見知らぬ旅行客がぶつかって来た拍子にスマホが路上に投げ出され、しかもそれをタクシーが踏みつけて行った。