ムーンサルトに 恋をして

脳内で危険だと警告してるのに、体が動かない。

飲み過ぎたせいなのか。
彼の視線に囚われてなのか。
お酒の魔力も相まって錯覚を起こしてしまったのか。
連日の優しい彼を知っているからなのか。

優しく髪を撫でられるその仕草にときめいてしまった。
先週、失恋したばかりだというのに。

指先が絡め捕られ、ベッドに張り付けられる。
どんなにクラクラしていても、この状況下で瞼を閉じたら最後だと分かっているのに。
左胸から警告音が鳴り響いてるのに、ゆっくりと影が降り注ぎ、瞼を閉じてしまった。


外国の人とのキス。
恋人でもないのに。
数日前に会ったばかりの、単なる知人のはずなのに。

触れる唇は、譲に恋した4年間のどのキスよりも甘くて。

譲以外にもキスした経験はあるのに、歴代の彼氏とのキスとは比べものにならないほど、ジルのキスは蕩けるような甘美の痺れを伴って……。

こんな危険な冒険はダメだと分かっているのに、突き放すことが出来ない。

お酒に酔っているのか。
キスに酔っているのか。

次第に深くなるにつれ、意識が朦朧とするほど余裕を失くして。
啄められて甘噛みされる心地よさを初めて知った。


一夜限りの想い出。

初めての経験でもないし、未成年でもない。
部屋に連れ込んだ時点で、アウトだったのだと思えば、納得できる。
全ては自分が蒔いた種なのだから。

服の上からでも分かる。
腕も肩も胸にも、鍛え上げられた筋肉がついているという事が。

彼の指先が、セーターの裾からゆっくりと滑り込んで来たーーー。

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