ムーンサルトに 恋をして

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羽田空港から12時間45分の直行便でジョン・F・ケネディ空港に到着したのが16時45分。
既に陽が傾きかけていて、心なしか寂しさを覚えた。

空港からシャトルバスでニューヨークの中心部へと向かう。
夕方という事もあり、少しずつネオンの灯りが彩りを添え、マンハッタンの魅力が溢れ出す時間帯。
憧れの景色を目にしているというのに、感動する心が壊れたのかな。
ちっとも楽しめない。

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ホテルにチェックインして、ベッドの上で荷物を解く。
ダブルベッドがこんなにも広いなんて……。
無意識に溜息が漏れていた。

「せっかく来たんだから、楽しまなくちゃっ」

ポシェットを手にして夜の街へと繰り出した。

高校、大学と短期留学の経験があり、海外旅行にも何度か行ってることもあり、旅行自体に不安はそれほどない。
強いて言うなら、話し相手がいない分、味気無さを感じるだろうと思うくらい。

大学はビジネス専攻で、就職先はスーパーの最大手企業のマーケティング事業部。
就職戦線を勝ち抜いた私は、いわゆる勝ち組と言われる部類だと思う。
相当努力したし、内定を貰ったことに誇りも持っている。

だからこそ、大学の4年間が無駄だったとは思いたくなくて。
譲との関係は終わったけれど、私の人生はこれからだと思うから。

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陽が沈んでから楽しめるオープンダブルデッカーバス。
タイムズスクエアから出発して、エンパイアステートビルなどを通り、マンハッタンの摩天楼を楽しむ屋根なしバスは、鬱々した気分をほんの少しだけ払ってくれた。

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