宮野くんに伝えたい想い~夢の世界から戻る方法は『好き』を伝え合うこと
 テントから出ると、朝の日差しが暖かくて気持ちが良い。

 すぐに使わないものとテントをタブレットにしまった。

「なんか浴衣姿、お祭りに行くみたいだね」
「だな」

 しばらく歩いていくと、本当にお祭り会場が見えてきた。

 わたあめやヨーヨー、ポテト、トロピカルジュースとか、沢山の出店がある。

 そしてみんな、私たちみたいに浴衣を着ている。

「えっ? こんな都合良くお祭り会場が現れるなんて……」

 私は驚いた。
 
「みんな銀色の髪に、きつねの耳みたいなのが生えてるな」

 宮野くんが耳に気がついてそう言った。
 大人、子供、男女全員についていた。

「私、人間かな?って思っていたけれど、人間じゃないのかな?」

「ぽいな。昨日の夜に見たのも人間じゃなかったけど、人間っていないのかもしれないな……」

「宮野くん、昨日の夜、何か見たの?」
「真っ黒い影。そういえば、それにも同じような耳がついてたな……」
「真っ黒い、影?」

「うん。小松はあれ、絶対に見ないほうがいいと思う」

「テントにいた時、それの音が聞こえてきたってことかな?」

「そう。あの時は小松を怖がらせないように、言わないでおいたけど。多分、暗くなってから出てくるんだと思う」

「怖い……」

「夜、外に出なければ大丈夫だと思うし、何かあっても小松のことは俺が守るから」

「ありがとう」

 頼りになる宮野くん。

「私も何かしたいな。何か私でも出来ることがあれば言ってね!」
「うん、分かった」

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