覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
マンションの前まで来ると、衣茉は、
「今日はどうもありがとうございました」
と言って頭を下げてきた。
「わざわざ送っていただいてすみません」
「いや……」
二人でなんとなく、近くのマンションの自動販売機からもれる灯りを見て、森を見た。
今度は俺がジュースをおごって、また二人であの森を歩きたい気分だが。
今日はきっと疲れてるよな、と八尋は衣茉を気遣う。
「じゃあ、早く部屋に入って鍵をかけろ」
はい、ありがとうございます、と衣茉はまた深々と頭を下げた。
マンションの玄関を入っても、また振り返り、頭を下げる。
エレベーターに乗っても、扉が閉まる前、ふたたび、頭を下げているのが見えた。
……セキュリティがしっかりしてて、いいマンションだと思っていたが。
このセキュリティ、俺も跳ね返されるよな、と八尋は思う。