覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
 


「電話、最初に担当してもらった編集さんからでした。
 いやもう、めちゃくちゃ久しぶりでびっくりしました」

 ロビーのソファに腰掛けたあとで、衣茉はそう言った。

「編集さんってなに?
 あ、そういえば、今、綾原先生とか言ってたけど」
と言ったあとで、吉行は笑って、手を打った。

「わかったっ。
 衣茉ちゃん、塾の先生だったんだっ」

 いや、何故ですか。

「先生って言っても、学校の先生っぽくはないから、昔塾の先生やってたとか。

 塾の先生って、よく本とか出してるじゃん。
『5分でよくわかる物理』みたいな感じで」

「いや、俺が学生だったら、こいつになにか習おうなんて思わないが……」
と八尋が率直な感想を述べ、

「5分でよくわかる!?
 5分で物理のなにがわかるって言うのよっ」
とうっかり物理を選択して、相当苦しめられたという明子がよくわからない切れ方をする。
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