覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
 服自体は普通にカジュアルな感じなのだが。

 靴とリュックだけが違っていた。

 職場と違ってパンツ姿ではあるが、街にショッピングに繰り出せそうな小洒落た格好の衣茉を上から下まで見て、

「山を舐めるな」
と八尋は言う。

 いや、観光地な吊り橋や断崖絶壁にしか行くつもりないんですけど……。

 なにやら、あなたの方が本気では……と思う衣茉に八尋が訊いてきた。

「で、何処に行くんだ?」

「とりあえず、この辺りで一番有名な大きな吊り橋に行ってみようと思います」

 衣茉がその吊り橋の観光案内のページを開いたスマホの画面を見せると、そうか、と八尋は頷く。
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