覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
「秘境駅みたいなところで降りることになると思うが。

 観光地なんで、バスも結構ある。

 近くに大きな公園があって、噴水もあるぞ」

「詳しいですね、課長」

「学生時代、この近くのキャンプ場に行ったことがあるんだ」

「課長の学生時代ってどんな感じだったんですか?」

 衣茉は、ついそう訊いていたが、容易に想像できるような気もした。

 そういえば、そんなに昔の話でもないし。

 この人、特に変わってなさそうだしな。

 堅物そうな顔して、結構付き合いのいい学生だったんだろう。

 今、ここにこうして来てくれているように――。

「じゃあ、行くぞ。
 はぐれるな」

 はいっ、と二人は気合いを入れたが、まだここは騒がしい大きな駅の中だった。



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