完璧生徒会長はとろける甘さの恋を描きたい
【第14章】
○13話の続きのシーン

千和「ど、どうして!? なんで急に最終回!?」
<おろおろしてしまう>

晴陽「寂しいって思ってくれる?」
<微笑>

千和「当たり前だよ! ナカオミくんとこころちゃん、やっと付き合ったばかりなのに……」
<必死で話す>

晴陽「うん。俺もあいつらのこの先をもっと、もっと描きたかったよ」
<ちょっと惜しそうな微笑>

千和「じゃあどうして?」

晴陽「もっと描きたいものができたから」
<きっぱり言う>

晴陽「俺さ、『きみここ』は自分の思う限りのロマンチックな恋を描いてたんだ」

晴陽「でも、実体験からのことはそのぶんかなり薄くて……、リアリティがなかったんじゃないか、ってずっと気になってて」
<ゆっくり自分の気持ちを話していく>

千和「そんなことないよ」

千和「ナカオミくんもこころちゃんも、恋に悩む気持ち、私すごく共感したもの」
<優しく否定し、褒める>

晴陽「そっか。ありがと」
<微笑でお礼を言う>

晴陽「でももっと高みを目指したい、って言ったらいいかな」

千和「どういうこと……?」
<不思議そうに聞く>

晴陽「……千和」
<そっと手を伸ばす>
<千和の手をぎゅっと握る>

千和「わ……」
<赤くなってしまう>

晴陽「お前と付き合って、恋の本当の気持ちを知ったからだ」
<優しげなまなざしで見つめ、はっきりと>

千和「……!」
<目を真ん丸にする>

晴陽「漫画に描いてたイメージじゃない。俺の心で感じることは全然違った」
<穏やかに、優しく話す>

晴陽「もどかしい気持ちも、愛おしいって思う気持ちも、本当は漫画で描ききれるものじゃないのか、って思ったくらいだ」

晴陽「だから『漫画がうまくなりたいから』なんて失礼だったよ。本当にごめん」
<眉を下げ、すまなさそうに謝る>

千和「ううん。だって、私も……きっと同じように思ったよ」
<首を振り、穏やかに話す>

晴陽「千和」
<ちょっと目を丸くする>

千和「そりゃあ最初は流されるみたいだったよ。仕方なく、っていう気持ちはあったもの」
<視線を落とし、ちょっと気まずく言う>

晴陽「そうだよな」
<苦笑>

千和「でもね、目の前にいてくれるひとになって、晴陽にどんどん惹かれていったの」
<視線を戻して、ふわっとした笑顔で言う>

千和「漫画に真剣なところも、生徒会長として頑張ってるところも」

千和「え、えっと……や、優しいところ、とかも」
<ちょっとだけ照れてしまう>

千和「だから……」
<言いかけたが、遮られる>

晴陽「……それは俺が最初に千和を好きになったところと同じなんだよ」
<優しい声で、静かに言う>

千和「……最初に?」
<不思議に思う>

晴陽「ああ。ずっと濁してて悪かった。……えっとな」
<すまなさそうに言い、千和の手を離す>
<ソファのサイドにあった引き出しからなにかを出す>

千和「?」
<きょとんとする>

晴陽「これ。見覚えないか」
<一枚の紙を差し出す>
<つたない漫画のような絵>
<ひまわりが印象的に描かれている>

千和「あ、……えっと、……あ! 夏の絵画教室のとき描いたやつ!?」
<不審そうな顔>
<数秒、考えて、ハッとする>
<思い当たり、驚いて声を上げてしまう>

晴陽「ああ」
<思い出してもらえて、微笑になる>

千和「えっ……、つまり、漫画交換してた『はるくん』って晴陽!?」
<驚愕の顔と声で、大声を上げる>
<小学五年生の晴陽の様子、大きな眼鏡で暗そうな男の子>

晴陽「やっと思い出してくれた?」
<苦笑>

千和「え、え……っ! だ、だって」
<おろおろし、紙と晴陽を見比べる>

晴陽「ま、仕方ないか。あの頃の俺、バリバリの陰キャだったもん」
<やれやれという様子>

千和「いや、その……」
<肯定できずに、しどろもどろになってしまう>

晴陽「自覚あるからいいって」
<苦笑>

晴陽「うん、とにかくあの絵画教室に行ったの、五年生のときかな。すっげぇ自分に自信がなかったんだ」
<懐かしそうに>

千和「そうだったの?」
<意外に思う>

晴陽「ああ。クラスの陽キャに『だせぇ』とか『下手くそ』とか言われて……もう辞めたいと思ってた」
<ちょっと顔を歪める>

千和「……うん」
<辛そうに頷く>

晴陽「その年に絵画教室が開催されてさ。母さんに勧められて仕方なく行ったんだ」

千和「そこで……」
<思い当たった顔>

晴陽「ああ。『ちよちゃん』に会った」
<懐かしそうに紙に視線を落とす>

○回想、夏の絵画教室
○晴陽、小学五年生
大きな眼鏡で暗そうな容姿と様子の男の子
○千和、小学四年生
茶色のロングヘアをかわいく結んだ、明るい様子の女の子

千和「はるくん、すっごくうまいじゃない!」
<暗そうな晴陽が描いていたところを、千和が覗き込んで褒める>
<心からそう思い、きらきらした目>

晴陽「そんなことない……、全然思い通りに描けないし」
<ぼそぼそ言う、自信のない様子>

千和「そっかぁ。絵って難しいよね。私ももどかしいときあるよ」
<理解ある顔で言う>

晴陽「そうでしょ」
<ぼそっと>

千和「でもね! 私、ここに来て『お絵描きって楽しい!』って知ったの」
<にこっとひまわりのように笑い、明るく言う>

晴陽「……!」
<眩しさに照らされたように、ハッとする>

千和「描いてると自分の気持ちが絵の中に見えてくる気がして、すっごく楽しい!」
<満面の笑みで、堂々と>

晴陽「……ちよちゃん」
<眼鏡の奥の目を、丸く見張る>

千和「だから、はるくんも『好き』って気持ちをこめてみたら、きっと楽しく描けると思うんだ」
<にこっと笑って、晴陽を覗き込む>

千和「それにね、絵に向き合ってるときのはるくん、すごく真剣だけど、楽しいって目をしてたんだよ」
<真剣に描いている晴陽を、正面から覗き込む千和>

○回想終わり

○現在のシーンに戻る

晴陽「それで漫画みたいな絵を描いて、夏休み中、交換してたよな」
<漫画の紙、ひまわりの部分を見つめて、穏やかに話す>

千和「そうだった。学校が違ったし遠かったから、それっきりだったけど……あれ、楽しかった」
<すべて思い出し、懐かしそうな顔になる>

晴陽「そっか。ありがとう」
<ふわっと笑う>

晴陽「あのときは、どこか義務感で描いてたんだと思う」
<昔の自分を見ているような目で>

晴陽「俺にはこれしかないからって」

晴陽「でもちよちゃんに会って、気持ちが少し変わった。描くのを楽しめるようになった」
<昔の晴陽のカット、気持ちが変わった様子>

千和「……そうだったんだ」
<眩しそうな笑みになる>

晴陽「そしたら不思議だよな。ほかのやつらが『見せてくれよ』って言ってくれるようになってさ」
<昔の晴陽のカット、教室で友達に囲まれて驚いている>

晴陽「俺はやっと知ったんだ。俺が『楽しい』って思わなきゃ、みんなも『面白い』って思ってくれないんだって」
<穏やかに、昔の自分を思い出している>

千和「……うん」

晴陽「だから、千和と付き合ったことで知った。俺が本当に『恋は幸せ』だって思ったら、きっと、もっと面白くて素敵な漫画が描けるんだ、って」
<顔を上げ、千和に視線を向けて、優しい笑み>

千和「……!」
<目を丸くする>
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