捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「話を戻すけど、これで商会は完全に潰せたのかしら?」
「ええ、商会長がアステル王国から引き上げてきたタイミングで運が良かったのです」
「アステル王国から?」
「はい、確か……ファンド? ファンタ? とにかく男爵家の出入りの商人だったのが、男爵がヘマをしたから逃げてきたと言ってましたよ?」

 アステル王国の貴族名鑑を頭の中で展開させて、もれなく覚えた男爵家の家名をさらっていく。

「……まさかと思うけどファンクではないかしら?」
「ああ! それです! それ!」

 ああ……余計なとばっちりがくる前にさっさと国から脱出してきて正解だったわね。スレイド伯爵領は大丈夫かしら? そろそろお父様にも手紙を書いてみようかしら。

「そんなことより、ロザリア様は困っていることや悩み事はないですか?」
「悩み事……」
「わたしでよかったら話してください! 少しでもロザリア様の力になりたいのです!」
「ありがとうございます。何かありましたら相談しますわ」

 悩み事というか、聞きたいことならある。
 でも今日友人になったばかりのジュリア様に話すには早い気がして、打ち明けられなかった。
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