捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 アレスは手を止めて思案している。十年に一度出るかどうかの素材だし、それを五個なんて無茶振りもいいところだとわかってるけど、これくらいしか思いつかなかった。

「集めることはできますが、数週間かかると思います。よろしいですか?」
「ええ、それは当然よね。アレスが素材を集めている間はちゃんと留守番しているから大丈夫よ」
「父上からの依頼ならばその間は城で世話してもらいましょう。最短で収集してきます」
「え、大丈夫よ。ひとりでもできるわ」

 私を心配したアレスが王城で過ごせと提案してくる。それではひとりになれないから却下したい。

「何日かかるかわかりませんし、食事の用意やその他諸々やらねばならないことがございます。本当におひとりでできますか?」

 だけどアレスの言葉で現実を突きつけられる。
 こんなでも貴族令嬢や王子妃だったから、お茶くらいしか淹れられない。今までアレスが長期間留守にすることがなかったから頭になかった。
 一瞬で諦めてパーフェクトな専属執事の言葉に素直に従うことにした。

「……ごめんなさい、王城で待ってます」
「はい、ではその様に手配して参ります」



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